吾輩は猫である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。
一週間ほど前に、
朝早く見知らぬ道をトボトボと歩いていると
おじさんたちに見つけら
首筋を掴まえられ
いかにも貧相な僕はそれでも鳴いていた。
彼らは、ひとしきり
僕のことについて話をしていたが
どうやら、生まれてひと月にも満たない茶虎の猫は
しばらく持ち主を探す苦労に値するまでもなく
近くの空き地か公園に
戻されてしまうことになったらしい。
そこに、空き地の向こうから
一人の女性がやってきて、
そんな様子を察して
梅雨空の中やせ細った僕を
連れて帰ることにして
今のお家にたどり着いたというのが
僕とその家との始まりである。
吾輩は猫である、名前はまだ無い。
とりあえず動物医院には連れて行ってもらい
目ヤニの出ていた眼には薬をもらって
僕の仮住まいは
近くのホームセンターで色んなものを買いそろえて
居間の中に作ってもらった。
吾輩は猫である。名前はまだ無い。
もうすぐ、動物医院に連れていかれるようである
カルテには僕の名前が必要だから
その時までに名前を付けるよう言われて
家の人々は考え中である。