久しぶりに図書館に行って
玄関を開けると
なにやら人があふれていた
閲覧のための机といすは
わずかに窓際が空いていて
僕はそこに本を手に座った
明るい中庭には
屋根から滑り落ちた雪が
小さなかたまりになって
モアイの像のように連なっていた
雪どけのしずくが
ゆっくりと、その上に落ち
雪のかたまりが頭をうがたれて
次第にくずおれていく
僕は小説を読み始めていた
以前話題になっていた本で
あらすじをたどっていくうちに
ほどこうとしてかえって絡みついた
毛玉のようなものがあふれるのを感じて
僕は読み始めた本を閉じた
中庭の雪のかたまりに目を移すと
溶けながらきらめく姿がまぶしく
やがて来る春の予感をまぶたに感じながら
図書館にいた