五月

隣の家に向かって枝を伸ばした樹を
思い切って斬ることとした

高い足継ぎがいるわ
と妻が言った

脚立の上に乗って
ここから?
と、私は声をかける

妻は、斬ることを嫌がっていたので
人二人分の高さあたりに鋸をあてて聞く

けれど、首を横に振り
もっと下の方を指さして言った
その枝のあたりでね

思い切った決断だった

樹は鋸の刃に斬られながら
少し悲鳴を上げ
樹皮のつながりで抗いながら
ついに斬り落とされ

そこから
明るい空がぽっかりと空いて
五月の強い日差しが見えてきた