街角でティッシュを配る人がいる
ありがとうと受け取る人がいて
私も手を差し出していた
冷たい風の吹く冬の日
見ると一篇の詩が印刷されている
愛する人のために、というタイトルで
いかにも保険の宣伝という詩だ
詩行をさかのぼると
そこには、有名な詩人の名が記されている
もうひとひねりほしい、
と思って見るのは、私くらいのものだろうか
きっと、その詩の書かれた透明なフィルムは
あっけなく、詩行の真ん中で破られ
ティッシュは一枚、一枚と
抜き出され
与えられた数回のチャンスで
詩行は大きく口を開け、口を閉め
やがてゴミ箱へと
捨てられていくに違いない
詩人の名前よりも大きく
詩篇の行よりも大きく
記された保険会社の名前とともに