朝の香り

コーヒーの香りが漂う
朝の食卓で
テレビを背に、母が言った

「自衛隊の人も、びくびくしてるやろうね。
 自分も行かされるかと思って。」

わずかの沈黙の後に
うなずいたわたしの胸中に
冷やかな言葉が流れる

―軍隊が戦地に行く―
当たり前のこと
そうではなかったのか

母のふるさとの知人の息子に
自衛隊で飯を食っていた者がいる
その息子も自衛隊に入って
飯を食っているそうだが

もしかして
彼は戦場の朝の香りをかぎながら
飯を食べる事になるのだろうか

そこがアフガンのどこになるのか
あるいは後方のどこの基地になるのかわからないが

飯盒の飯と
命の危険とを引きかえに……